桜花ライフアカデミーのメンター・足名笙花先生は、都内のフリースクールで常勤スタッフとして活動しながら、宇都宮大学大学院博士後期課程で不登校者支援の研究を行っています。自身も中学時代に不登校を経験した足名先生が、東北地方のフリースクールを実地調査した貴重な報告です。
本記事は、「居場所研究会」発行の『季刊 居場所研究』第1巻第1号に掲載された活動報告を、全3回に分けてお届けします。フリースクールの運営に関心のある方、地方の教育格差問題に関心のある方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
不登校研究やフリースクールに携わるようになったキッカケ
報告者は、都内のフリースクールで常勤スタッフとして活動しながら、宇都宮大学大学院の博士後期課程にて不登校者の居場所の拡充に関する研究と、不登校者の「その後」を見据えた支援体制に関する研究を行っている。こういったフリースクールにおける活動や不登校者に関わる研究を行うキッカケとなったのは、自身の高校時代のことに遡る。
報告者は、中学時代の不登校経験から学力や体力不足を理由に、自転車で通学できる範囲の通信制高校の全日コースへ入学した。そこでの生活に関して今回は割愛するが、不登校経験者ばかりが集まる学年で、20数名の同級生とともに充実した3年間を過ごした。しかし多くの同級生が進路選択として選んだ大学や専門学校、就職先に入学・就職後、一人ひとりと大学を中退したり、仕事を辞めたりといった連絡を受け、1〜2年の間に3分の2程度の友人は音信不通になってしまった。また報告者と同時に大学へ入学した7名中、ストレートで卒業を決めたのは、報告者ただ一人であり、その後大学卒業に至ったのは、報告者含め3名であった。
大学院への進学経緯と研究テーマ

こういった状況から、報告者は大学で歴史学を専攻する傍ら教員養成課程にて教育学や現代社会学に触れ、「不登校者の居場所」の在り方や、「不登校経験者の継続支援」の必要性について考えるようになった。そして大学2年生の頃に立ち上がったフリースクール設立構想の一人として活動するようになり、2019年4月の通信制高校サポート校とフリースクールの設立から、もうすぐ6年目を迎える。
大学卒業後は、都内の大学院に進学。歴史学から社会デザイン学に転向し、「社会的自立」の視点を入れる必要性を示した「不登校児童・生徒のその後を見据えた居場所の在り方の再検討―問題解決志向をもったフリースクールの取り組みを中心に―」といった修士論文を書き上げた。
この論文では、「学校に行く、行かない」といった不登校状態そのものに対して目を向ける時代は既に終息しつつあり、今後は不登校の児童・生徒が学校以外の選択として、子どもの自由と自主性を尊重するだけではない、不登校者のその後に対しても意識のある居場所の需要が高まっていくのではないか、という結論に至った。そして従来の不登校の児童・生徒の「居場所」は「休息や逃避の場」と「送り出す役割」の間で矛盾が生じていたが、今後は不登校経験者のその後を支援する過程で、再び不登校になった場合や、進路先で困難が生じた際に、フリースクールに戻ったり、フリースクールを活用したりする、より社会に開かれた「行き来」ができる場として機能することが必要となることを示唆した。
そして今年度から報告者は、宇都宮大学大学院に研究のフィールドを移し、「不登校者の社会的自立を支援する民間教育施設の拡充に関する研究」を大きなテーマとして掲げ、研究を行っている。
この研究は主に3つのテーマによって構成されている。1つめは、不登校者を取り巻く社会や環境の変化も含めた不登校者の支援体制の現状・課題について文献研究を中心に研究したもの。2つめは、不登校者に対する学習支援や進路支援を含む「不登校者のその後」に関する支援策の具体的な検討であり、3つめは、不登校者のための公的および民間の居場所を拡充するための官民協働の実践活動・実践研究である。
そしてその集大成として、報告者の問題意識として常に存在している「不登校者のその後を見据えた支援」と、地域差が激しく行政からの後ろ盾もなく、利用者の利用料によって運営されるために、経営状態も安定しない「不登校者支援を担うフリースクールをはじめとした民間教育施設の運営の安定化及び、全国的な施設数の拡充」に関する博士論文を執筆したいと考えている。そのため今年は、不登校者を支援する民間教育施設の運営や経営に関する査読論文を提出し、学会発表では、心理学やキャリア教育学で多用されるレディネスや自己決定力が不登校者の社会的自立に寄与する可能性を示した。レディネスとは、学習のために必要な準備状態のことである。自己決定理論とは、他人から報酬や評価を得るため、または罰を回避するために行動しようとする「外発的動機付け」から、自分が本当にやりたいこと、やるべきことである「内発的動機づけ」に至るまでの過程に関する理論である。これらの成熟・育成が不登校者の社会的自立を説明できるのではないかと考え、使用した。
本記事は『季刊 居場所研究』第1巻第1号(居場所研究会発行)より、著者の許可を得て転載しています。
▶ 次回「東北地方の居場所を訪問して(2)フリースクールの経営実態」へ続く


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