第3回:私のフリースクール生き残り戦略——株式会社自由教育の設立と新たな課題

株式会社自由教育の設立とフリースクール運営の新たな課題を象徴する、契約書類と学習スペースのイメージ画像
目次

2022年、株式会社自由教育設立

サポート校・フリースクール・学習塾として4年目を迎えた2022年は新たな教育問題の顕在化によってフリースクールを必要とする生徒たちが増えた年でした。それは、「私立中学校生」の不登校問題です。2023年の調査で不登校児童生徒数が30万人に迫っているという事実が明らかとなりました。しかしその中で私立の小中学校に通う生徒たちの数はほんのわずかです。しかも私立学校はある種、閉ざされた社会であり、内情が分かりにくく、そもそもやる気のある生徒が高倍率をくぐり抜けて入学してくるわけですから、不登校とは縁遠いように見られてきました。また私立学校の生徒が不登校になった場合、在籍を諦めて、公立の小中学校に転入することが既定路線となることもあり、私立学校の中で不登校になり長期間苦しんでいる生徒が存在することはあまり想定されていませんでした。

2022年からは私立中学校で不登校になった生徒の保護者さんからの入校相談が相次ぎました。

話を聞くと、中学受験の塾が厳しくて精神的に疲れてしまった。私立中学の独自の校風についていけなくなった。周りの子の頭が良すぎて学力的に取り残されてモチベーションを失った。親が追い込みすぎて子どもが精神を病んでしまった。など公立中学校で不登校になる生徒とは少しずつ違った理由で不登校になっていました。しかし総じていえるのは、公立中学校の不登校生よりも問題の本質を掴みにくいことでした。

これまでに会ってきた不登校生はフリースクールで元気になれば、学校に復帰しても元気でやっていける生徒がほとんどでした。しかし私立中学校の不登校生徒はフリースクールで元気を取り戻して、学校に行けそうだと思っても、いざ学校に行こうとすると原因不明の体調不良に悩まされ結局行けなかったり、どれだけ元気になっても、学校には戻らないという意思を固めていたりと、支援のゴールがどこなのかを掴むことが困難でした。

思うに子どもというのは純粋な存在であり、だからこそ真理から外れたことが本来はできないようになっているのではないでしょうか。そこを理解しない周囲の大人が無理をさせてしまえば、子どもが頑張ろうとすればするほど体は拒否反応を起こして、できることまでできなくなってしまうのではないかと思います。子どもたちが心から学びたいと思える学問を探す手伝いをし、その学問の成熟を後押し、見届けていくことこそが私の考える「自由教育」の在り方であると考え、それを会社の名称としました。

生徒数が増えて安定的な運営が可能になったため、これまで私の個人事業だった滝野川高等学院は、2022年12月に株式会社自由教育として法人化し、私が代表取締役となりました。NPOではなく株式会社にした理由は、フリースクールは非営利的な業態をしていますが、その経営を安定させるためには資金がある程度潤沢である必要があるためです。そしてフリースクール経営のための資金の獲得は、貰えるか貰えないか分からない寄付金や、いつ打ち切られるか分からない助成金などに頼るのではなく、自力で稼ぎ出すべきであると考えたためです。

2023年、蒔いた種が芽を出し、実り始める

運営母体を株式会社にしたことで、その実態以上に周りからの見る目が変わってきました。「安定して見える」というのは集客上の大きな武器です。不思議と信頼度が増し、入校相談者での来校者の入校率が上昇しました。個人事業が株式会社になると勢いがあるように見えるようです。

さて、先ほどフリースクールは生徒が学校に復帰すれば売り上げを失うと述べましたが、滝野川高等学院では学校に復帰した生徒の多くがそのまま学習塾に移っていくというスキームをこの5年である程度、確立させることができました。また、夏休みなどの学校の長期休みを利用してフリースクールに来る生徒もいます。不登校生は学校に復帰したらすべての問題が解決するというわけではありません。学校に復帰したらしたで、定期テストで点を取らないといけない、受験はどうするのか、不登校は再発しないか、と課題は山積みです。そんな課題に答えられるのが、学習塾部門を持つフリースクールです。

もともとの本業のサポート校のほうも、徐々に活動が周知されてくると、全日制高校で不登校になって留年が決まった生徒や、在籍している通信制高校が自分に合わずに単位を多く落としている生徒などが助けを求めにくるようになりました。またフリースクール在籍生のうち、全日制高校の受験を選ばない生徒はそのままうちに在籍し、サポート校生として高校卒業資格の取得を目指すようになりました。フリースクール生たちの中には、もし進学した先の高校で不登校になったら滝野川に戻ってくればいい。という安心感を武器に高校受験に挑む生徒も多くいます。

こうして設立当初からありながら、すぐにお荷物となってしまっていた「サポート校」も最近ではやっと輝きを放つようになりました。こうして2023年が終わる頃、生徒総数は80名に迫る大所帯となり、生徒数だけでいえば全国でもかなり大きな規模のフリースクールになってきました。内訳としては、フリースクールの小中高生が50人ほど。サポート校(高校)生が10人ほど。塾生が20人ほどとなっています。


本記事は『季刊 居場所研究』第1巻第1号(居場所研究会発行)より、著者の許可を得て転載しています。

▶ 次回「私のフリースクール生き残り戦略(4)決して諦めない」へ続く

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次