東北地方の実地調査に向かうまでの過程と、報告者の問題意識
この2月には、宇都宮大学の研究助成を使用し、文部科学省(2015年)の調査で特にフリースクールをはじめとした民間教育施設数が少なかった東北地方の不登校者支援を行うフリースクールにインタビュー調査及び施設見学を行った。2015年の調査では、岩手県の施設数が1件、青森県が2件と認知施設数が少なく、2024年3月現在もその状態に大きな変化はない。実地調査に至るまでには、インターネットを用いた事前調査のうえ、メールを用いて、調査の詳細をお送りし、調査依頼を行った。その中にはすぐに調査の承諾連絡を送ってくださる団体もあれば、まったく音沙汰無しといった団体もあった。その場合、電話で再度お願いするのだが、不登校者支援を行うフリースクールや民間教育施設の中には、ホームページに電話番号やメールアドレスといった情報が載っていないものも多く、お問い合わせページや公式LINEなどを用いなければ連絡をつけることができない団体も多かった。
今回の報告では詳しく触れないが、不登校者支援を行う団体の多くは法人格を持たない団体であったり、法人格を持っていたとしても、ホームページがなかったり、しっかり機能していないといった問題があり、施設や団体の様子を知ることは容易ではない。生徒数、利用者層、利用料金、連絡手段など、フリースクールを探している保護者や当事者にとっても重要な情報が公開されていないことは由々しき問題である。
そういった事情から実地調査を行う団体が決まるまで、2ヶ月ほどの時間を要した。簡単な内訳としては、10団体に連絡をとり、結果的に承諾を得たのは4団体で、連絡がつかなかった団体が1件、お断りの連絡があったのが3件だった。またこちらの3団体のうち1件は、フリースクールの募集を停止している団体、1件は今後数カ月のうちにフリースクールの運営を取りやめる団体であり、もう1件は、人員確保などの問題から調査断りの連絡があった。残りの2団体については社会福祉協議会と、地域の子どもたちに関わる法人であったが、こちら2か所は電話とメールを用いた情報提供の依頼にとどまった。
この調査依頼から調査対象を選定するまでの間でも、フリースクールが運営を停止したり、停止しようとしたりしている団体があることを認識し、いかにフリースクールの運営や経営が難しいか、身をもって知ることになった。なお、フリースクールが運営を停止することは、東北地方に限らず、都内でも起きていることであり、特にコロナ禍の際には多くのフリースクールが運営を継続できず、運営を休止またはとりやめていた。
これは自身の研究でも述べていることであるが、不登校者の居場所に限らず、何らかの場や団体をつくることは比較的容易である。しかし、その場や団体を継続して運営していくことは、大変難しいことであり、民間団体の多くはボランティア精神が高いあまり経営視点が足りず、立ち行かなくなってしまう団体が多い。しかしこういった団体や施設にたどり着く利用者やその保護者は、数は少なくとも存在するわけで、運営が立ち行かなくなって、施設を閉める際には、利用者やその保護者は、居場所を失うだけでなく、人や民間団体に対して不信感を抱くことにもなり、本当に居場所や安心感を必要としていた人々の気持ちをさらに陥れることにもなる。つまり慈善活動であれ、ボランティアであれ、安定した経営・運営下で継続していくことが、本当の意味での利用者やその家族の支援につながるのである。
報告者はこういった問題意識をもとに、全国的に、特に地方において施設数や団体数が少ない不登校者を支援するフリースクールをはじめとした民間教育施設の拡充と、安定・継続した経営が可能となる運営条件について研究しており、その初めの調査の場として青森県と岩手県に旅立ったのである。
東北実地調査(1)経営面の気づき

なお今回は報告者が東北地方に初めていくということ、電車移動であること、助成金の範囲内であること、フリースクールは平日に実施しており、報告者自身もフリースクールの業務との兼ね合いがあったことから、木曜日・金曜日、そして土曜日の3日間で調査を実施し、さらに向かうことが困難な沿岸部は今回の調査対象とはしなかった。
具体的な地域名は、プライバシーや倫理上の問題で今回は避けるが、今回の調査は2月の実施だったのにもかかわらず、天候に恵まれ、どの団体も大変丁重に迎えてくださった。調査は大体各団体2時間程度の半構造化インタビューで実施した。半構造化インタビューとは、大体の質問項目を決めたうえで、実際のインタビューの最中に、その時々に出た疑問や質問をその場で訊ねるという手法である。半分は構造化されており、半分は非構造のインタビュー形式である。
調査の結果については、本来であればいくつかの分析方法に則って公表するのだが、今回は調査の実施から時間が経過していないため、報告者の感覚的な部分や運営者に話を聞いている中で感じたことを中心に示していく。まず調査を実施した3団体(残りの1団体は学生団体であるため、施設は保有しない)に共通したこととして、フリースクールの運営だけでなく、その他に経済基盤となる経営母体があったことである。例えば、調査を行った2団体は、塾を運営しており、塾が始まるまでの午前から午後の時間にかけて部屋を間借りしている団体であった。そして家賃に関しては、現状、塾が全てまたはほとんどのテナント代を支払っており光熱費についても同様だった。また人件費についても、助成金で賄っていたり、塾とフリースクールの代表者が同じであるため、塾の売り上げで生計を立てたりしていた。
なお、この2団体はフリースクールを立ち上げて数年以内である。ある団体によると、地方でフリースクールを立ち上げた際に、都内で子どもの居場所を運営する団体を中心に行っていた助成金で、現在は人件費や教材費などを賄っているとのことだった。このため、こちらの団体の場合は、比較的高額な助成金があること、さらに運営母体が塾の運営を行っていることから、スタッフの表情からは運営にゆとりがあるように感じられた。
とはいえ、フリースクールの利用者数はまだ10名にも満たず、利用者から得る利用料のみで運営が成り立っていないことから、助成金や運営母体がなければすぐさま経営は成り立たなくなるだろう。助成金とはとても勝手の良い資金であり言葉であるが、助成金があることで、民間教育施設を何としてでも運営しなければならないとか、持続させなければならないとか、そういった気概が薄くなってしまうことは一種の課題ともいえる。助成金も永続的に続くわけではないため、助成金があるうちにフリースクールのみの売り上げで独立していくことを目指していくことが必要だろう。
本記事は『季刊 居場所研究』第1巻第1号(居場所研究会発行)より、著者の許可を得て転載しています。
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足名笙花 研究活動HP:
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